10分以内で読める北原白秋の短編作品

お月さまいくつ。

桐の花とカステラの時季となつた。

萩原君。

＊あの第一回の烈震以来、その後千数百回の余震に、人人はどれだけ脅かされたか。

上静かにすゝむ時の輪の軋（きしり）つたへて幽かにも――白光、小鳥にゆるゝごと明日の香ゆらぐ夢の浪薄紫にたゞよひて白帆張りゆく霊の舟円らに薫る軟かぜの千里の潮の楽の音と人が息吹は力あるいのちの韻、永久に血の脈搏と大闇の沈黙やぶりて響くまで――神澄みわたる雪の夜の聖きひと夜を神秘なる天の摂理と黙示との悟うるべく厳かに書万巻の廬（ろ）をいでゝ雪に清し...

25. ※（かげ）. 10.午後三時過ぎ、薄黄水仙の浅葱の新芽枯れたる芝生のなかに仕切られたる円形或は長方形の花壇のなかに二寸ばかり萌えいづ。

凡てが小生には復と得難い哀しい省察の時を与へて呉れました。

私が東京に着いて一番に鋭く感じたのは新橋停車場の匂でした。

詩は芸術の精華である。

幽かに香ひはのぼる。