蜂の巣太鼓櫓の棟木の陰へ、すいすいと吸いこまれるように、蜂がかくれてゆく、またぶーんと飛び出し...
蜂の巣太鼓櫓の棟木の陰へ、すいすいと吸いこまれるように、蜂がかくれてゆく、またぶーんと飛び出してゆくのもある。
出廬十年語り合っても理解し得ない人と人もあるし、一夕の間に百年の知己となる人と人もある。
出廬十年語り合っても理解し得ない人と人もあるし、一夕の間に百年の知己となる人と人もある。
関羽千里行時刻ごとに見廻りにくる巡邏の一隊であろう。
関羽千里行時刻ごとに見廻りにくる巡邏の一隊であろう。
生ける験ありこの正月を迎えて、謙信は、ことし三十三とはなった。
生ける験ありこの正月を迎えて、謙信は、ことし三十三とはなった。
煩悩攻防戦呂布は、櫓(やぐら)に現れて、「われを呼ぶは何者か」と、わざと云った。
煩悩攻防戦呂布は、櫓(やぐら)に現れて、「われを呼ぶは何者か」と、わざと云った。
夜魔昼魔安治川尻に浪が立つのか、寝しずまった町の上を、しきりに夜鳥が越えて行く。
夜魔昼魔安治川尻に浪が立つのか、寝しずまった町の上を、しきりに夜鳥が越えて行く。
日輪呉侯の妹、玄徳の夫人は、やがて呉の都へ帰った。
日輪呉侯の妹、玄徳の夫人は、やがて呉の都へ帰った。
中原を指して蜀(しょく)の大軍は、※陽(はよう)(陝西省・※県(べんけん)、漢中の西)まで進ん...
中原を指して蜀(しょく)の大軍は、※陽(はよう)(陝西省・※県(べんけん)、漢中の西)まで進んで出た。
骨を削るまだ敵味方とも気づかないらしいが、樊城の完全占領も時の問題とされている一歩手前で、関羽...
骨を削るまだ敵味方とも気づかないらしいが、樊城の完全占領も時の問題とされている一歩手前で、関羽軍の内部には、微妙な変化が起っていたのである。
降参船「この大機会を逸してどうしましょうぞ」という魯粛の諫(いさ)めに励まされて、周瑜もにわか...
降参船「この大機会を逸してどうしましょうぞ」という魯粛の諫(いさ)めに励まされて、周瑜もにわかにふるい起ち、「まず、甘寧を呼べ」と令し、営中の参謀部は、俄然、活気を呈した。
吉岡染明日は知れないきょうの生命また、信長も謡った――人間五十年、化転のうちをくらぶれば、夢ま...
吉岡染明日は知れないきょうの生命また、信長も謡った――人間五十年、化転のうちをくらぶれば、夢まぼろしの如くなりそういう観念は、ものを考える階級にも、ものを考えない階級にもあった。
枯野見丹波街道の長坂口は、指さして彼方に望むことができる。
枯野見丹波街道の長坂口は、指さして彼方に望むことができる。
西瓜伏見桃山の城地を繞(めぐ)っている淀川の水は、そのまま長流数里、浪華江の大坂城の石垣へも寄...
西瓜伏見桃山の城地を繞(めぐ)っている淀川の水は、そのまま長流数里、浪華江の大坂城の石垣へも寄せていた。
弟の窓・兄の窓紺屋の干し場には、もう朝の薄陽が映している。
弟の窓・兄の窓紺屋の干し場には、もう朝の薄陽が映している。
御子と女奴原始のすがたから、徐々に、人間のすむ大地へ。
御子と女奴原始のすがたから、徐々に、人間のすむ大地へ。
民衆の上にある英雄と、民衆のなかに伍(ご)してゆく英雄と、いにしえの英雄たちにも、星座のように...
民衆の上にある英雄と、民衆のなかに伍(ご)してゆく英雄と、いにしえの英雄たちにも、星座のように、各※(とう)の性格と軌道があった。
序曲、百八の星、人間界に宿命すること頃は、今から九百年前。
序曲、百八の星、人間界に宿命すること頃は、今から九百年前。
伊太利珊瑚うす寒い秋風の町角に、なんの気もなく見る時ほど思わず目のそむけられるものは、女の呪詛...
伊太利珊瑚うす寒い秋風の町角に、なんの気もなく見る時ほど思わず目のそむけられるものは、女の呪詛をたばねたような、あのかもじのつり看板です。
石の降る夜古市の朝は、舟の櫓音やら車の音で明けはじめる。
石の降る夜古市の朝は、舟の櫓音やら車の音で明けはじめる。
新春太平綺語おそらく、十代二十代の人には一笑にも値しまい。
新春太平綺語おそらく、十代二十代の人には一笑にも値しまい。
はしがきどうも、序文というよりは、これは“おことわりがき”になりそうです。
はしがきどうも、序文というよりは、これは“おことわりがき”になりそうです。
国土病む直義は残って、なお重臣たちと、今後の方針をかためあった。
国土病む直義は残って、なお重臣たちと、今後の方針をかためあった。
幸福人あの座敷に寝ころんで見たら、房総の海も江戸の町も、一望であろうと思われる高輪の鶉坂に、久...
幸福人あの座敷に寝ころんで見たら、房総の海も江戸の町も、一望であろうと思われる高輪の鶉坂に、久しくかかっていた疑問の建築が、やっと、この秋になって、九分九厘まで竣工た。
雪千丈「佐どの」「佐どのうっ」「おおういっ」すさぶ吹雪の白い闇にかたまり合って、にわかに立ち止...
雪千丈「佐どの」「佐どのうっ」「おおういっ」すさぶ吹雪の白い闇にかたまり合って、にわかに立ち止まった主従七騎の影は、口々でこう呼ばわりながら、佐殿のすがたを血眼でさがし始めた。
勝負の壇正成は弓杖をつき、すこし跛(びっこ)をひいていた。
勝負の壇正成は弓杖をつき、すこし跛(びっこ)をひいていた。
雛(ひな)の客備前岡山の城はいま旺んなる改修増築の工事にかかっている。
雛(ひな)の客備前岡山の城はいま旺んなる改修増築の工事にかかっている。
野分のあと敗者の当然ながら、直義の三河落ちはみじめであった。
野分のあと敗者の当然ながら、直義の三河落ちはみじめであった。
露のひぬ間九死に一生を得、殿軍の任を果して帰った将士が、京都に帰りついた第一夜の望みは、「とに...
露のひぬ間九死に一生を得、殿軍の任を果して帰った将士が、京都に帰りついた第一夜の望みは、「とにかく寝たい!」それだけだった。
浅野内匠頭七ツちがい春の生理をみなぎらした川筋の満潮が、石垣の蠣(かき)の一つ一つへ、ひたひた...
浅野内匠頭七ツちがい春の生理をみなぎらした川筋の満潮が、石垣の蠣(かき)の一つ一つへ、ひたひたと接吻に似た音をひそめている。
武名競べ血飛沫鹿の子生田の馬場の競べ馬も終ったと見えて、群集の藺笠(いがさ)や市女笠などが、流...
武名競べ血飛沫鹿の子生田の馬場の競べ馬も終ったと見えて、群集の藺笠(いがさ)や市女笠などが、流れにまかす花かのように、暮れかかる夕霞の道を、城下の方へなだれて帰った。
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