ブンゴウサーチ
児童書版

待機

金鍾漢
『待機』は青空文庫で公開されている金鍾漢の短編作品。601文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   601 文字
人気
  -- PV
書き出し
雪がちらついてゐるしんみりしづかに雪がちらついてゐるそのなかをききとしてきみたちはいもうとよまたいとこよおとうとよまなびやへと急いでゐるながいながい昌慶苑の石垣づたひ雪がちらついてゐるしんみりしづかに雪がちらついてゐるちらついてゐるおとうとよまたいとこよいもうとよそれはふりかかるきみたちのかたにたわわな髪の毛にひひとしてやぶれ帽子のうへに十ねんわかくなつてわたくしも...
初出
1942年   (「国民文学」1942(昭和17)年12月号)
底本
「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房, 1996(平成8)年3月31日 
表記
新字旧仮名
※「人気」は青空文庫の過去10年分のアクセスランキングを集計した累計アクセス数から算出しています。

金鍾漢 の人気作品

合唱について
金鍾漢
きみは半島から来たんぢやないですかだうりですこし変つた顔をしてゐると思つたでもそんな心細い思ひをすることはないですよほら松花江の上流からもはろばろ南京の街はづれからも来てゐるではないかスマトラからもボルネオからもいまには重慶の防空壕からもやつてくるでせうではみんな並んで下さいおお砲口のやうだ整列されてゐる口の横隊それは待つてゐる待ちあぐんでゐるタクトの指さす方向へ未来へやが...
5分以内
空山明月
金鍾漢
むらはよるのなかにしづみよるはかへるのなきごゑのなかにしづみひがともるふたつひとつかへるのなきごゑのなかにさてよつぱらひのつきがでてきてしろがねのむらをはきだすのです。
5分以内
古井戸のある風景
金鍾漢
しだれ柳はおいぼれてゐて井戸のそこにはくつきりと碧空のかけらが落ちてゐて閏(うるふ)四月おねえさまことしも郭公が鳴いてゐますねつつましいあなたは答へないで夕顔のやうにほほゑみながらつるべをあふれる碧空をくみあげるつるべをあふれる伝説をくみあげる径は麦畑のなかを折れて庭さきに杏も咲いてゐるあれはぼくらの家まどろみながら牛が雲を反芻してゐるほら水甕にもおねえさま...
5分以内
一枝について
金鍾漢
年おいた山梨の木に年おいた園丁は林檎の嫩枝を接木した研ぎすまされたナイフををいてうそさむい瑠璃色の空に紫煙を流したそんなことが出来るのでせうかやをら園丁の妻は首をかしげたやがて躑躅が売笑したやがて柳が淫蕩した年おいた山梨の木にも申訳のやうに二輪半の林檎が咲いたそんなことも出来るのですね園丁の妻もはじめて笑つたそして柳は失恋したそして躑躅は老いぼれた私...
5分以内