書き出し
砂糖のような安逸がおれの感覚をにぶらしている鍋底で倦怠だ!憂鬱だ!と小声でつぶやいている若い熱情が下駄の歯のようにすりへりそうだ残火が火消壺で喘いでいる短気な意志が放心した心臓をつかんでいるそいつは滓(かす)だおれの食慾がめしを喰ってるおれの性慾が女を恋しようとしているオブロモフ!オブロモフ!オブロモフ!倦怠をつぶやきながらも安逸は砂糖のように甘い憂鬱の霧を逃れようともしないでおれはうずくまって...
初出
1923年
(「鎖」1923(大正12)年6月創刊号)
底本
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社, 1987(昭和62)年5月25日