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児童書版

鋼鉄

今村恒夫
『鋼鉄』は青空文庫で公開されている今村恒夫の短編作品。591文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
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書き出し
俺達は貧困と窮乏の底で生れた俺達は圧迫と不如意の中で生長した俺達は鋼鉄になった俺達は現代が要求する共産主義者になった俺達は地下から生み出された光りを持たない暗黒と放浪と死に瀕した現実であった堪え難い生活の溶鉱炉の中へ投げ込まれた旋風と熱気と断末魔の苦悶と没自我の中で生れた儘(まま)の俺達は俺達を失った残滓を捨てた洗練された鉱石は銑鉄になった俺達は戦線に召集されたそこで益々鍛われて行った銑鉄は鋼鉄になった俺...
初出
1929年   (「文芸戦線」1929(昭和4)年11月号)
底本
「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社, 1987(昭和62)年6月30日
表記
新字新仮名
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歩哨戦
今村恒夫
悪検閲制度をぶっ潰せ検閲制度改正期成同盟万歳労働者農民万歳残虐の限りを尽し暴圧の嵐は絶えず吹き続け遂に俺達の言葉迄奪った奴等哀れな奴等の迫害だ哀れな奴等の猿轡だ首を締めつける彼奴等の顔へ憫笑の一瞥を投げて野火の如く囂(ごう)々と拡がり行くではないか俺達の火の手真赤な火の手虫けらの如く無残にも抹殺され空しく屍を曝す幾千の言葉血潮の憤激戦闘の伴侶敵を斃す俺達の鋭利な武器...
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山上の歌
今村恒夫
同志等よ素晴らしい眺めではないか君達の胸はぶるぶると打ちふるえないか脚下の街に林立する煙突と空を蔽う煤煙とるるるるっと打ちふるえている工場の建築物おおそして其処で搾りぬかれた仲間等が吹き荒ぶ産業合理化の嵐の前に怯え恐れ資本への無意識的な憤懣の血をたぎらせているのだ街は鬱積した憤懣で瓦斯タンクのようになっている街は燐寸の一本で爆発へ導く事が出来るのだそして俺達は厳重なパイや工場の監守の目をかすめて山上に会合を持ち得たではないか...
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死ぬる迄土地を守るのだ
今村恒夫
会場にはぎっしり聴衆がつめていた。
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今村恒夫
俺達の手を見てくれ給えごつごつで無細工で荒れて頽(すた)れて生活の如に殺風景だが矍鑠(かくしゃく)とした姿を見てくれ給え頑健なシャベルだ伝統と因習の殻を踏み摧(くだ)き時代の扉を打ち開く巨大な手だりゅうりゅうと筋骨はもくれ上り俺達の如く底力を秘めているどきっどきっ脈打つ血管には火よりも赤い革命の血が流れすべっすべっ皮膚は砲身の如く燿(かがや)いているペシャンコにひしゃげた爪は兄弟達の顔面の如に醜いが...
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