書き出し
お早うさん昨夜の夢は?故郷の庭には柘榴(ざくろ)の花が散ってるだろうけさもまたやめて帰ろと思うたが帯はあせたし汽車賃なしではどうにもならぬ爪をもがれた蟹のように冷たい石畳みをヨチヨチと私たちは工場へはいる今日もいちんちトタン塀の中で無自由だ!渇いて渇いてやりきれぬトタン塀の外はたんぽぽが咲いて乳をながしたような上天気町の活動小屋がラッパを吹いて廻るし糸をつなぐ手が...
初出
1931年
(「プロレタリア詩」1931(昭和6)年9月号)
底本
「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社, 1987(昭和62)年6月30日