書き出し
腹は凹んで皮ばかりのようだ口はほせからツバも出ない目はかすんでものが見えぬ三分作なのに地主はおしかけて来た来年の年貢をよこせとそして手をあわせて拝むわたしらを尻目にかけ一粒のこらずかっさらって行った毎日毎晩わたしらは夢中で外へ這い出たキョロキョロになって吹雪の中をかけまわった木の根をむしった草の芽をかんだ見つけ次第犬猫を殺し奪い合って食った腹がキリキリしたゲイ...
初出
1932年
(「プロレタリア文学 第一巻第五号」1932(昭和7)年4月25日)
底本
「中野鈴子全詩集」フェニックス出版, 1980(昭和55)年4月30日