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児童書版

飢餓の中から

中野鈴子
『飢餓の中から』は青空文庫で公開されている中野鈴子の短編作品。903文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   903 文字
人気
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書き出し
腹は凹んで皮ばかりのようだ口はほせからツバも出ない目はかすんでものが見えぬ三分作なのに地主はおしかけて来た来年の年貢をよこせとそして手をあわせて拝むわたしらを尻目にかけ一粒のこらずかっさらって行った毎日毎晩わたしらは夢中で外へ這い出たキョロキョロになって吹雪の中をかけまわった木の根をむしった草の芽をかんだ見つけ次第犬猫を殺し奪い合って食った腹がキリキリしたゲイ...
初出
1932年   (「プロレタリア文学 第一巻第五号」1932(昭和7)年4月25日)
底本
「中野鈴子全詩集」フェニックス出版, 1980(昭和55)年4月30日
表記
新字新仮名
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