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児童書版

廃園 《断片》

森川義信
『廃園』は青空文庫で公開されている森川義信の短編作品。537文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   537 文字
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書き出し
骨を折る音その音のなかに流れる水は乾き鳶色の風は落ちて石に濡れた額は傾くままに眠つたみえない推移の重さに骨を折る音その音のなかに佯りの眼を閉ぢて凍える半身は倒れるもの影とともにうつしく忘却をまつた骨を折る音その音のなかにおまへを鞭うつものはすでにない目かくしをする掌もなくいのちににじむ明りもない凭れかかる肩もなく壊れてゐる家具さへない...
初出
底本
「増補 森川義信詩集」国文社, 1991(平成3)年1月10日
表記
新字旧仮名
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森川義信 の人気作品

あるるかんの死
森川義信
眠れやはらかに青む化粧鏡のまへでもはやおまへのために鼓動する音はなくあの帽子の尖塔もしぼみ煌めく七色の床は消えた哀しく魂の溶けてゆくなかではとび歩く軽い足どりも不意に身をひるがへすこともあるまいにじんだ頬紅のほとりから血のいろが失せて疲れのやうに羞んだままおまへは何も語らないあるるかんよ空しい喝采を想ひださぬがいいいつまでも耳や肩にのこるものがあつただらうか眠るがいいや...
5分以内
青き蜜柑
森川義信
愁ひ来て丘にのぼりて酸の香る蜜柑もぐなり悲しみの青き蜜柑を栗林こえて見ゆるは背きにし君の町なるぞゆふぐれに深く沈みて掌にしみる青き蜜柑よそをかみて何を思はむ昔の日は皆空しきにああされど君も寂しとこの丘の青き蜜柑のその香りなぜか愛でたり自らの影をふみつつゆふぐれの丘を下りき掌に悲し青き蜜柑よ。
5分以内
虚しい街
森川義信
白亜の立体もひたむきな断面もせつない暗さの底へ沈みつつ沈みつつ翳に埋れ影に支へられその階段はどこへ果ててゐるのかはかなさに立ちあがりいくたび踏んでみたことだらう煙のある窓ちかく自ら扉はひらきそこに立ち去る気配もなかつた忘れられた木の椅子のほとりから哀れな水の匂ひがひろがり脱落するしやつのあとにはあやまちのごとく風が立つたあのふしあはせな鳶色の時間には美...
5分以内
あるひとに
森川義信
もうとどかない花の日よりもさびしかつたつかれのやうに羞んで古い折返しの向ふへかくれたひとよもうとどかない花の日のやうにいつまでもぼくは考へてゐる。
5分以内