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仲村渠の全作品

青空文庫で公開されている仲村渠の全作品35篇を、おすすめ人気順で表示しています。

1〜35件 / 全35件
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科学の蜘蝶が張つた整然たるアンテナの巣よ蝟集する空中消息は豊麗な蝶々だ見上げる額に気象台の鋭角は颯爽たる意欲よああ空に向つて垂れる氷柱の先端つき刺された空は円形の青地図をひろげ見よ殺到する電波は世界の沿線を描いてゐる。
雨のなかに伏せつてゐた兵士らの群よ青空へ五月へ今走りゆく兵士らの背に野は萌える。
空の遠くに五月が真つ青く咲いて指をさして僕はその爪先に希望をともして身は街裏に五月を待つ。
音楽堂を繞つて空椅子の環状配列がいつしんに聴いてゐる落葉をはく園丁の箒の音をああよりそふ僕らの囁きを。
児どもは砂遊びや水遊びをするためにいたづら着をつけてべんりである紳士は善いことを成就すべく勲章や羽織をまとふて立派である。
幸ひに髪がふさふさと綺麗だからこの頭蓋骨のなかに菫色の豆ランプをともしつれない恋人よこの美しい角燈を貴女の寝室へ贈らうと思ひます。
僕はまどに凭つてひとを待つ空は青い空は晴れるばかりどこか格納庫のよこで一等飛行士は眺めてゐる空を空を彼のうへに晴れる空を。
煉瓦塀をおし破つて転びにゆく青い草地肩にのぼる花やかな雲雲をよんで刺しとめる新しい剣口にとびこんでくる微細な飛行機飛行機が逃げぐちを求める一枚の空。
いつたいどんな営みが始まつたのであらう街街は灯の暗号を残してかくれてしまふいつたいどんな呼吸が始まつたのであらう欅欅は梢を伸ばして天空に身を捧げる。
障子はあけなくともアンテナは光つてゐようぞ母よ三郎はおめざが欲しい二十三にもなつたので自転車ものりたくない朝は街のすみにも光つてゐますが母よ三郎はおめざが欲しい。
帆柱は美しい雲をあげてゐた帆は裂かれて。
北方に何ごとぞ雲雲を引具して空を急いだ街街は雨の喪服街はとほい街は沈むアンテナは潜望鏡をまねて雲を観た北方に何ごとぞや?欅は丘で街を観た欅は終日雲を迎へて雲を送つた欅は終日濡れる街を眺めてゐた。
月はひろげた市街地図をうすく青塗りにする僕は白チオクのちいさい残粒コロコロ市街双六の上を転つてゆく白い骰子転し手もない上りもない悲しい骰子月に内臓の赤い花花をみんな食べられてしまうた蜉蝣の悲しいからだに落魄れてしまうた帽子かむつて僕はころがつてゆく軽石の骰子。
植物はとほくけぶる外輪山の緑のいろ。
白昼だから秋だから原つぱは白かつた白昼だから秋だから空も白かつた原つぱのまんなかでひとり戸山学校の生徒が喇叭を吹いてゐた赤いズボンはいて喇叭を吹いてゐた白昼だから秋だから原つぱは廻つてゐた白昼だから秋だから空も廻つてゐた赤い心が澄んで廻つてゐた喇叭を吹いて廻つてゐた。
円錐形のさきで僕ひとり。
あなたの白い手冷くならんだ五指の甲でこの頬が打たれたい落葉に敲かれるシルクハツトは悲しげである凛乎と美しい反りで悲しげである一座の花形美少女の平手に敲かれる道化役の頬より悲しげであるキヤフエの紳士白皮の手套に敲かれる酔漢の頬より悲しげであるねがひは降りしきる落葉素裸に立つ僕のからだは悲しげである。
氏は書を能くし発句や謡をたしなみ就中たいてい柔道二段ぐらゐの腕まへあり氏は毎朝東天遙拝のちラヂオ体操たのまれて話の屑籠なども執筆なさるのだ氏は氏の一挙手一投足は逸話となつて細大洩らさず新聞などに珍重され氏の巾広い声量は氏の身代のやうに潤沢たとへば除幕式などに周知の風采をあらはして一言もつて祝辞などを述べ給ふ。
――琉球の墓を見たことがあるか。
海水から金が採れるといふが地球全表面その三分の二の海から幾噸の金がにぎれるか濡れ手に千金それを湯水のやうに浪費せばたのしからん水のやうに金をつかふいや躯いつぱい水を流せば水はぜいたくな幻想となりおれのてつぺんにぜにの音がはじけ散るよありあまり溢れる量のやはらかく水道の口金はじけ怒るごとく水の放出になにか溜飲のさがるやうす水の鋼鉄にうなじを敲かし恣なるしばしのとき……。
仔どもや金貸しや先生や役人や痩せたのも太いのもいつしよくたに汗や膏や表皮を流す裸のとき裸の楽しいときをへてさてふたゝび湯水のなかを産れるとき豹縞馬の身のやうな美しい毛皮なしまた候おれの襯衣衣裳のなかおれの型に頭髪をとゝのへ髯眼鏡を貼附なし「光」などくちに銜へ立派やかひとりまへに成りすましたゆくさきは苗字ところ番地のしるされた祖先が穴居時代なしたやうにおれの住む家に這入つていつた。
友よ肩をならべて街へゆかう質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ友よ腕をくめ街は霧だ燈火の美しくなる十二月何だらう僕らを呼んでゐるものは?友よ新しい気流が渡つてるにすぎぬのだよ街のうへを何だらう僕らの顔に匂つてくるものは?気弱い友よナフタリンの玉がころがつてるにすぎぬのだよかくしの底に霧は僕らの肩におりるやうす友よ友よ話してゆかう声だかに燈火のあひだ霧のしたを。
騒しい仔猿たちいねこちらをむいて雌はしばしの憩ひおれは些少の空地に椅子をだしておれのうへに満天の星座おれが空気を呼吸すればかれらも天の青い層をとほして賑やかに息づくかに見えるのだがさて雨ありてたちまちこの界隈この露路の奥雨はしづかに市にふる雨の車軸よおれを恣にこの界隈を敲くがよいおれは椅子に動かないおれにはできる濡れること!滑稽ながらこれが首題の冒険だめすよ糊のきいたゆかたが心配はて風邪...
氷になつて午后一時A広場のまんなかで消えてしまう。
絵具は雄弁にねむつてゐる一水夫は港を想ふ夜!珊瑚は沈んでゐる夜。
初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く八方に疎通してあますところは無いのであるさつそく鄭重な御供物をおくり盛大な葬儀に列してゐるを見る門札をうつて居を構へてゐるその収入の道その収入のほどは否税務署の吏員氏さへ難渋するのだから今これを窺ふべくもないのである午後かれを訪問すればしたしく応接間に召じいれ熱あり魅力あ...
那覇港よその海民よ剽悍な気魄いまやなしああ美しい贈りものを!尾類が紅いどくを文身こむだらうよ人魚の肌へ鮫を、比目魚を、いらぶう、海豚を市をめぐつて海の族が酔うて痴れて酔ひ痴れておまへを誘ひにくるだらう泡盛の匂ひを古酒を撒いて!沈め沈め沈め海へ底へおまへの市の石垣が魚城の砦に役立つ日が来たそこで午睡をするがよい!おまへの午睡に役立つ日が来た海の中で黄いろ?赤いろ?百...
青いおほきい船にのつてゆかう。
鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。
浚渫(さらひ)船はいづこの海を浚つてゐるのだらう鉄片は沈んで沈んで港の底眇の眸を覗かせるよああ気なげな空想を抱いてゐるぞねそべつた比目魚が吐きだす泡にぶらさがりゆらゆら海面に昇つてゆく鉄片の願望よおをい!海上遠く、青空映す友だちよ針魚よりも鋭い腰の短剣め!あいつの主人はランチを飛ばして海軍大尉の美男子だ浮標めの自由な展望よあいつは海と空の骰子だあいつは燈台の横腹にさしこむ朝日の第一線にも見あきて...
――悪いことがなければよいが電柱のとつさき、工夫が云ふふん今夜は誰も苦情は云ふまいて。
なぜあんなに明るい顔をしてるんだらう。
今晩は、みなさん。
何よりも僕はその表題が好きだ。
晴天煙突を眺めるのが好きなひとがゐた。
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