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5分以内で読める竹内浩三の短編作品

青空文庫で公開されている竹内浩三の作品の中で、おおよその読了目安時間が「5分以内」の短編53作品を、おすすめ人気順に表示しています。

(〜2,000文字の作品を対象としています。読了時間は「400字/分」の読書スピードで計算した場合の目安です)
1〜50件 / 全53件
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戦死やあわれ兵隊の死ぬるやあわれとおい他国でひょんと死ぬるやだまってだれもいないところでひょんと死ぬるやふるさとの風やこいびとの眼やひょんと消ゆるや国のため大君のため死んでしまうやその心や苔いじらしやあわれや兵隊の死ぬるやこらえきれないさびしさやなかず咆えずひたすら銃を持つ白い箱にて故国をながめる音もなくなにもない骨帰ってはきました...
街はいくさがたりであふれどこへいっても征くはなし勝ったはなし三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれどだけどこうしてぼんやりしているぼくがいくさに征ったなら一体ぼくはなにするだろうてがらたてるかなだれもかれもおとこならみんな征くぼくも征くのだけれど征くのだけれどなんにもできず蝶をとったり子供とあそんだりうっかりしていて戦死するかしらそんなまぬけなぼくなのでどうか人なみにいくさが...
この空気この音オレは日本に帰ってきた帰ってきたオレの日本に帰ってきたでもオレには日本が見えない空気がサクレツしていた軍靴がテントウしていたその時オレの目の前で大地がわれたまっ黒なオレの眼漿が空間にとびちったオレは光素(エーテル)を失ってテントウした日本よオレの国よオレにはお前がみえない一体オレは本当に日本に帰ってきているのかなんにも...
序論G線の下でアリアをうたっていたてるてる坊主が雨にぬれていた本論交通が便利になって文化はランジュクした戦争に勝ってリキュウルをのんだはだかおどりの女のパンツは日章旗であったタケヒサ・ユメジがみみかくしの詩をかいた人は死ぬことを考えて女とあそんだ女とあそんで昇天した震災が起っていく人もやけ死んだやけ死ななかったものは...
こん畜生!おれはみぶるいしたおれは菊一文字の短刀を買ってふたたびその女のところへきたさァ死ねさァ死ねお前のような不実な奴を生かしておくことはおれの神経がゆるさん女は逃げようとしたまて死ねなけゃおれが殺して――ひとの真実をうらぎるやつはそれよりもおれに大恥をかかしたやつはココ殺してやるきったついた血が吹いたこん畜生!おれはふたたびみぶる...
映画についてむつかしいもの。
はらをへらした人のむれに、ぼくは食堂横町へながされていった。
かの女を人はあきらめろと云うがおんなを人はかの女だけでないと云うがおれには遠くの田螺の鳴声までかの女の歌声にきこえ遠くの汽車の汽笛までかの女の溜息にきこえるそれでもかの女を人はあきらめろと云う。
金がきたらゲタを買おうそう人のゲタばかりかりてはいられまい金がきたら花ビンを買おう部屋のソウジもして気持よくしよう金がきたらヤカンを買おういくらお茶があっても水茶はこまる金がきたらパスを買おうすこし高いが買わぬわけにもいくまい金がきたらレコード入れを買おういつ踏んでわってしまうかわらかない金がきたら金がきたらボクは借金をはらわ...
ぼくが帰るとまもなくまだ八月に入ったばかりなのに海はその表情を変えはじめた白い歯をむき出して大波小波をぼくにぶっつけるぼくは帰るとすぐに誰もなぐさめてくれないので海になぐさめてもらいにやってきた海はじつにやさしくぼくを抱いてくれた海へは毎日来ようと思った秋は海へまっ先にやってくるもう秋風なのだ乾いた砂をふきあげる風だぼくは眼をほそめて海を見ておった表情を変えた海を...
さいげんなくざんござんごと雨がふるまっくらな空からざんござんごとおしよせてくるぼくは傘もないしお金もない雨にまけまいとしてがちんがちんとあるいたお金をつかうことはにぎやかだからすきだものをたべることはにぎやかだからすきだぼくはにぎやかなことがすきださいげんなくざんござんごと雨がふるぼくは傘もないしお金もないき...
詩を作り、人に示し、笑って、自ら驕(たかぶ)る――ああ、此れ以外の何を己れは覚えたであろう?この世で、これまで……城左門できるだけ、知らない顔を試るのだけれど、気にしないわけにはゆかない。
よく生きてきたと思うよく生かしてくれたと思うボクのような人間をよく生かしてくれたと思うきびしい世の中であまえさしてくれない世の中でよわむしのボクがとにかく生きてきたとほうもなくさびしくなりとほうもなくかなしくなり自分がいやになりなにかにあまえたいボクという人間は大きなケッカンをもっているかくすことのできない人間としてのケッカンその大きな弱点をつかま...
東京はタイクツな町だ男も女も笑わずにとがった神経で高いカカトで自分の目的の外は何も考えず歩いて行く東京は冷い町だレンガもアスファルトも笑わずに四角い顔で冷い表情でほこりまみれでよこたわっている東京では漫画やオペラが要るはずだとうなずける。
大名行列のえいほえいほ殿凱風快晴北斎の赤富士にござりまする。
うたうたいはうたうたえときみ言えど口おもくうたうたえず。
十月の兵営に桜が咲いたちっぽけな樹にちっぽけな花だしかも五つか六つださむそうにしながら咲いているのだばか桜だおれははらがたった。
蛍光を発して夜の都の空をかける風に指がちぎれ鼻がとびさる虹のように蛍光が夜の都の空に散る風に首がもげ脚がちぎれる風にからだが溶けてしまう蛾が一匹死んでしまった。
松の木山に銃声がいくつもとどろいた山の上に赤い旗がうごかない雲を待っている銃声が止むとごとんごとんと六段返しみたいに的が回転するおれの弾は調子づいたとみえてうつたびに景気のいい旗が上ったおれの眼玉は白雲ばかり見ていた。
ゴットンゴットン汽車が行くケムリをはいて汽車が行くアレアレアレアレ脱線だお人形さんの首が飛びキューピイさんの手が飛んだ死傷者優に三十個オモチャの国の大椿事。
Ishikoro no michiIshikoro no michiKaa tto higa sena wo yakuAoba no Midori ga me ni itaiIshikoro no sakaIshikoro no saka。
月が変圧器にひっかかっているし風は止んだしいやにあつくるしい夜だ人通りもとだえて犬の遠吠えだけが聞こえるいやにおもくるしい夜だエーテルは一時蒸発を止め詩人は居眠りをするようないやにものうい夜だ障子から蛾の死がいが落ちた。
アアちゃん白い雪のふる木の葉のちる寒い風のふくアアちゃんぼくはたたずみうづくまり寒い風のふく湯気のちぎれとぶアアちゃんぼくは地べたに爪あとをつけケシの種子をほりかえすアアちゃん。
ふわふわ雲が飛んでいるそれは春の真綿雲むくむく雲が湧いて来たそれは夏の入道雲さっさと雲が掃いたようそれは秋空よい天気どんより灰色いやな雲それは雪雲冬の空まあるい空のカンヴァスにいろんな雲を描き分けるお天道さんはえらい方。
銭湯へゆく麦畑をとおるオムレツ形の月大きな暈(かさ)をきてひとりぼっち熟れた麦強くにおうかのおなごのにおいチイチイと胸に鳴くかのおなごはいってしまったあきらめておくれといってしまった麦の穂を噛み噛みチイチイと胸に鳴く。
がらがらまぬけたいかづちがらがらトスカニニのゆくトスカニニのエロイカのゆくがらがら花を見蛇を見むすめを見見るものを見がらがら帽子を忘れステッキを忘れズボンを忘れがらがらひたぶるトスカニニのエロイカのゆく。
私のすきな三ツ星さん私はいつも元気ですいつでも私を見て下さい私は諸君に見られてもはずかしくない生活を力一ぱいやりまする私のすきなカシオペヤ私は諸君が大すきだいつでも三人きっちりとならんですゝむ星さんよ生きることはたのしいねほんとに私は生きている。
しかられて外へは出たが我家から夕餉の烟と灯火の黄色い光に混ぜられたたのしい飯の音がする強情はってわるかったおなかがすいた風も吹く三日月さんも出て来たよあやまりに行くのもはずかしいさらさら木の葉の音がした。
カアテンのかかったガラス戸の外で郊外電車のスパァクがお月さんのウィンクみたいだ大きなどんぶりを抱くようにしてぼくは食事をする麦御飯の湯気に素直な咳を鳴らしどぶどぶと豚汁をすするいつくしみ深い沢庵の色よおごそかに歯の間に鳴りひびくおや外は雨になったようですねもうつゆの季節なんですか。
丘のすそに池がある丘の薄は銀のヴェールである丘の上につくりもののトオチカがある照準の中へトオチカの銃眼をおさめておいておれは一服やらかした丘のうしろに雲がある丘を兵隊が二人かけのぼって行った丘も兵隊もシルエットであるこのタバコのもえつきるまでおれは薄の毛布にねむっていよう。
空には雲がなければならぬ日本晴れとは誰がつけた名かしらんが日本一の大馬鹿者であろう雲は踊らねばならぬ踊るとは虹に鯨がくびをつることであろう空には雲がなければならぬ雲は歌わねばならぬ歌はきこえてはならぬ雲は雲は自由であった。
夜の大海原に星もなくさぶい風が波とたたかい吹雪だ灯もない吹雪だあれくるう北海あれるただ一つの生き物ウキをたよりに生きのび生きのびる人間助かるすべも絶えたそれでも雪をかみ風をきき生きていた生きていたやがてつかれはてて死んだ。
若草山やそよ風の吹く大和の野かすみかすみそよ風の吹くおなごの髪やそよ風の吹くおなごの髪や枯草のかかれるを手をのばしとってやるおなごのスカアトやつぎあとのはげしさおなごの目や雲の映れるそよ風の映れる二人はいつまでとその言葉やその言葉やそよ風の吹く。
修利修利摩訶修利修修利娑婆訶己のうたいしことのはのかずかずは乾酪のごと麦酒のごと光うしないてよどみはてしはわがこころのさまもかくありなんとの証なるべしうたうまじかたるまじただ黙々として星など読まん風などきかん口業のあさましきをおもいてわれ黙して身をきり臓をさいなまんただ苦業こそよけれただに涅槃(ねはん)をおもい顔色を和らげ善きことせん無声もて善きことせん。
赤い赤い四角い形が障子に落ちている青い青い丸い葉が赤い空気に酔っているひらひらとコーモリが躍る人は静かに戸を閉めて電気をつけて汁をすする赤い明るい西の空も灰色にむしばまれるそしてくろくなってやがてだいやもんどに灯がつくそして人は日記などつけて灯を消し一日が終わったと考えて神に感謝して祈る。
蛾が静かに障子の桟からおちたよ死んだんだねなにもしなかったぼくはこうしてなにもせずに死んでゆくよひとりで生殖もしなかったの寒くってねなんにもしたくなかったの死んでゆくよひとりでなんにもしなかったからひとはすぐぼくのことを忘れてしまうだろういいのぼくは死んでゆくよひとりでこごえた蛾みたいに。
あの山を越えるときおれたちは機関車のように蒸気ばんでおっただまりこんでがつんがつんとあるいておった急に風がきて白い雪のかたまりをなげてよこした水筒の水は口の中をガラスのように刺したあの山を越えるときおれたちは焼ける樟樹であったいまあの山はまっ黒でその上にぎりぎりとオリオン星がかがやいているじっとこうして背嚢にもたれて地べたの上でいきづいていたものだまたもや風がきて雨をおれたちの顔にか...
午前三時の時計をきいた。
上衣のボタンもかけずに厠(かわや)へつっ走って行った厠のまん中にくさったリンゴみたいな電灯が一つまっ黒な兵舎の中では兵隊たちがあたまから毛布をかむって夢もみずにねむっているのだくらやみの中でまじめくさった目をみひらいているやつもいるのだ東の方が白んできて細い月がのぼっていた風に夜どおしみがかれた星はだんだん小さくなって光をうしなってゆくたちどまって空を...
十月一日、すきとおった空に、ぼくは、高々と、日の丸をかかげます。
東京がむしょうに恋しい。
南から帰った兵隊がおれたちの班に入ってきたマラリヤがなおるまでいるのだそうな大切にもってきたのであろう小さい木綿袋に見たこともない色んな木の種子おれたちは暖炉に集ってその種子を手にして説明をまったこれがマンゴウの種子樟(くすのき)のような大木にまっ赤な大きな実がなるというこれがドリアンの種子ああこのうまさといったら気も狂わんばかりだ手をふるわし身もだえさえして語る南...
ふみきりのシグナルが一月の雨にぬれてボクは上りの終列車を見て柄もりの水が手につめたくかなしいような気になってなきたいような気になってわびしいような気になってそれでもためいきもなみだも出ずちょうど風船玉がかなしんだみたい自分が世界で一番不実な男のような気がし自分が世界で一番いくじなしのような気がしそれにそれがすこしもはずかしいと思えずとほうにくれて雨足を見たらいくぶんセンチメンタルに...
あなたはかえってきたあなたは白くしずかな箱にいる白くしずかなきよらかなひたぶるひたぶるちみどろひたぶるあなたはたたかっただ日は黒ずみくずれたみなきけみなみよこのときあなたはちった明るくあかくかがやきちったちってきえた白くしずかにきよらかにあなたはかえってきたくにが...
ずぶぬれの機銃分隊であったぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになったぼくだけあごひもをしめておったきりりと勇ましいであろうと考えたいくつもいくつも膝まで水のある濠があったぼくはそれが気に入ってびちゃびちゃとびこんだまわり路までしてとびこみにいった泥水や雑草を手でかきむしった内臓がとびちるほどの息づかいであった白いりんどうの花が狂気のようにゆれておったぼくは草の上を氷河のように匍匐(ほふく)し...
満州というとやっぱし遠いところ乾いた砂がたいらかにどこまでもつづいていて壁の家があったりするそのどこかの町の白い病院に熱で干いた唇が枯草のように音もなく山田のことばでいきをしていたのかゆでたまごのようにあつくなった眼と天井のちょうど中ごろに活動写真のフィルムのように山田の景色がながれていたのかあゝその眼に黒いカーテンが下りその...
白い小学校の運動場でおれたちはひるやすみした枝のないポプラの列の影がながいポプラの枝のきれたところに肋木の奇妙なオブジェに赤い帽子に黒い服のガラスのような子供たちが流れくずれてかちどきをあげておれたちの眼をいたくさせる日の丸が上っている校舎からオルガンがシャボン玉みたいにはじけてくるおれのよごれた手はヂストマみたいに飯盒の底をはいまわり飯粒をあさっているさあこの手でもって「ほまれ」をはさ...
なんのためにともかく生きているともかくどう生きるべきかそれはどえらい問題だそれを一生考え考えぬいてもはじまらん考えれば考えるほど理屈が多くなりこまるこまる前に次のことばを知ると得だ歓喜して生きよヴィヴェ・ジョアイユウ理屈を言う前にヴィヴェ・ジョアイユウ信ずることはめでたい真を知りたければ信ぜよそこに真はいつでもある弱い人よボクも人一倍弱い信...
われ、山にむかいて、目をぞあぐる。
一月――凍てた空気に灯がついた電線が口笛を吹いて紙くずが舞上った木の葉が鳴ったスチュウがノドを流れた二月――丸い大きな灰色の屋根真白い平な地面つけっぱなしのラムプが低うく地に落ちて白が灰色に変った三月――灰色はコバルトに変り白は茶色に変った手を開けたら汗のにおいが少しした四月――ごらんおたまじゃくしを白い雲をそし...
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