書き出し
めじろめじろめじろ冬の端山を渡りくるめじろの群れのおしやべりは……それはまるで夏の日の日の暮れ方、とある街角をくる風鈴賣りの、あの毀れ易い硝子の器を百も吊るした、人の肩に擔はれてくる小さな輕い華やかな店さきの、音樂!その商品の一つ一つが互に囁きあつてゐる、ひそやかなれども騷がしい、いつも一つのものでありながら、けれども單調といふのでない、即興歌のより集り。
初出
1938年
(「四季 四一號」1938(昭和13)年11月)
底本
「三好達治全集第一卷」筑摩書房, 1964(昭和39)年10月15日