徳冨蘆花の全作品

第百版不如帰の巻首に不如帰が百版になるので、校正かたがた久しぶりに読んで見た。

僕は武蔵野の片隅に住んでいる。

常陸の国霞が浦の南に、浮島と云って、周囲三里の細長い島がある。

地蔵様が欲しいと云ったら、甲州街道の植木なぞ扱う男が、荷車にのせて来て庭の三本松の蔭に南向きに据えてくれた。

戸を明くれば、十六日の月桜の梢（こずゑ）にあり。

良夜とは今宵ならむ。

六、七、八、九の月は、農家は草と合戦である。

玉川に遠いのが第一の失望であつた。

此れは逗子の浦曲に住む漁師にて候、吾れいまだ天長節外務大臣の夜会てふものを見ず候ほどに、――と能がゝりの足どり怪しく明治卅二年十一月三日の夕方のそり／＼新橋停車場の改札口を出で来れるは、斯く申す小生なり。

車上六月四日、エルサレムを立ち、サマリヤを経てガリラヤに赴かんとす。

勿來連日の風雨でとまつた東北線が開通したと聞いて、明治四十三年九月七日の朝、上野から海岸線の汽車に乘つた。