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富永太郎の全作品

青空文庫で公開されている富永太郎の全作品37篇を、おすすめ人気順で表示しています。

1〜37件 / 全37件
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私は透明な秋の薄暮の中に墜ちる。
私はその建物を、圧しつけるやうな午後の雪空の下にしか見たことがない。
人語なく、月なき今宵色ねびし窓帷(ぎぬ)の吐息する此の古城なる図書室の中央の遠き異国の材もて組める残忍の相ある堅き牀机にありし日よりの凝固せる大気の重圧に生得の歪(ひづみ)悉皆消散せる一片の此の肉体を枯坐せしめ勇猛なく效(かひ)なき修道なれどなほそが為に日頃捨離せる真夜中の休息を貪りて、また貪らうとはする。
思想の重圧のために眠りがたい躰(からだ)には、起つてロココ風の肘掛椅子に腰を下ろすことが必要である。
青鈍たおまへの声の森に銅を浴びたこの額を沈めたい柔く柔く毛細管よりも貞順にオーボアよ胸を踏め睫毛に縋れ。
琺瑯の野外の空に明けの鳥一つ阿爾加里性水溶液にてこの身を洗へ蟷螂は眼光らせ露しげき叢を出づわが手は緑玉製 Isis(イジス) の御膝の上に。
五月のほのかなる葉桜の下を遠き自動車は走り去る。
古池の上にぬつと突き出たマドロスパイプ。
ありがたい静かなこの夕べ、何とて我が心は波うつ。
おまへの手はもの悲しい酒びたしのテーブルの上に。
阪を上りつめてみたら、盆のやうな月と並んで、黒い松の木の影一本……私は、子供らが手をつないで歌ふ「籠の鳥」の歌を歌はうと思つた。
雪解けの午後は淋し砂利を噛む荷車の轍の音遠くきこえ疲れ心地にふくみたるパイプの煙をのゝく室ぬちは冬の日うすれ描きさしのセント・セバスチアンは低くためいきす。
たゞひとり黎明の森を行く。
鋼の波にアベラール沈み鉛の艫(とも)にエロイーズ浮む骸炭は澪(みを)に乗り直立する彼岸花を捧げて走り『死』は半ば脣(くち)を開いて水を恋ひまた燠(おき)を霊床とするすべては緑礬のみづ底に息をつく象牙球の腹部の内側に。
病みさらぼへたこの肉身を湿りたるわくら葉に横たへようわがまはりにはすくすくと節の間長き竹が生え冬の夜の黒い疾い風ゆゑに茎は戛々の音を立てる節の間長き竹の茎は我が頭上に黒々と天蓋を捧げ網目なすそのひと葉ひと葉は夜半の白い霜を帯びいとも鋭い葉先をさし延べわが力ない心臓の方をゆびさす。
七月の日光の多彩なるアラベスク。
※キオスクにランボオ手にはマニラ空は美しいえゝ血はみなパンだ※詩人が御不在になると千家族が一家で軋めくまたおいでになると掟(おきて)に適つたことしかしない※神様があいつを光らして、横にして下さるやうに!それからあれが青や薔薇色のパラソルを見ないやうに!波の中は殉教者でうようよですよ。
うす暗い椽側の端で、琥珀色した女の瞳が光つた――夫に叛いた。
母親は煎薬を煎じに行つた枯れた葦の葉が短かいので。
立ち去つた私のマリアの記念にと友と二人アプサントを飲んだ帰るさ星空の下をよろめいて、互の肩につかまりあつた。
溝ぷちの水たまりをへらへらと泳ぐ高貴な魂がある。
Honte(オント) ! honte(オント) !眼玉の蜻蛉(とんぼ)わが身を攫(さら)へわが身を啖(くら)へHonte(オント) ! honte(オント) !燃えたつ焜爐(こんろ)わが身を焦がせわが身を鎔かせHonte(オント) ! honte(オント) !干割れた咽喉わが身を涸らせわが身を曝らせHonte(オント) ! honte(オント) !...
半缺けの日本の月の下を、一寸法師の夫婦が急ぐ。
月青く人影なきこの深夜家々の閨をかいま見つゝ白き巷を疾くよぎる侏儒の影あり愚かなる状して黒々と立てる屋根の下に臥所ありて人はいぎたなく眠れり家々はかく遠く連なりたれど眠の罪たるを知るもの絶えてあらず月も今宵その青き光を恥ぢず快楽を欲する人間の流すいつはりの涙に媚ぶと見えたりかゝる安逸の領ずる夜なればあらんかぎりの男女の肌を見んとて魔性の侏儒は心たのしみおもはゆげもなく軒より軒...
おまへの歯はよく切れるさうな山々の皮膚があんなに赤く夕陽で爛らされた鐃鉢を焦々して摺り合せてゐるおまへはもう暗い部屋へ帰つておくれおまへの顎が、薄明を食べてゐる橋の下で友禅染を晒すのだとかいふ黝(くろ)い水が産卵を終へた蜉蝣(かげろふ)の羽根を滲ませるおまへはもう暗い部屋へ帰つておくれ色褪せた造りもののおまへの四肢の花々で貧血の柳らを飾つてやることはないコンクリートの護岸堤は思...
今宵私のパイプは橋の上で狂暴に煙を上昇させる。
Kiosque au Rimbaud“Marila” ※ la main,Le ciel est beau,Eh ! tout le sang est Pain.2Ne voici le po※te,Mille familles dans le m※me toitRevoici le po※te :On ne fait que le droit.3Que Dieu le luise...
幾日幾夜の熱病の後なる濠端のあさあけを讃ふ。
酔ひ痴れて、母君の知り給はぬ女の胸にあるとき、「*ここにわが働かざりし双手あり」の句を君の耳もとにさゝやき、卒然と君の眼の中に、母君の白き髪と額の皺とを呼び入れるものは何であるか。
夕暮の癲狂院は寂寞として苔ばんだ石塀を囲らしてゐます。
地は定形なく曠空くして黒暗淵(わだ)の面にあり神の霊水の面を覆ひたりき――創世記黒暗の潮今満ちて晦冥の夜ともなれば仮構の万象そが※[#「門<亥」、U+95A1、19-上-9]性を失し解体の喜びに酔ひ痴れて心をのゝき渾沌の母の胸へと帰入する。
眼球は日光を厭ふ故に瞼(まぶた)の鎧戸をひたとおろし頭蓋の中へ引き退く。
花の散つてゐる街中の桜並木を通つてゐた。
※陽の眼を知らぬ原始林の幾日幾夜の旅の間わたくし熟練な未知境の探険者はたゞふかぶかと頭上に生ひ伏した闊葉の思ひつめた吐息を聴いたのみだ。
私には群集が絶対に必要であつた。
私はその頃不眠症に悩んで居た。
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