芥川竜之介の全作品（5ページ目）

今般、当村内にて、切支丹宗門の宗徒共、邪法を行ひ、人目を惑はし候儀に付き、私見聞致し候次第を、逐一公儀へ申上ぐ可き旨、御沙汰相成り候段屹度承知仕り候。

秀林院様（細川越中守忠興の夫人、秀林院殿華屋宗玉大姉はその法諡なり）のお果てなされ候次第のこと。

或秋の夜、僕は本郷の大学前の或古本屋を覗いて見た。

書紀によると、日本では、推古天皇の三十五年春二月、陸奥で始めて、貉（むじな）が人に化けた。

文政四年の師走である。

埃僕の記憶の始まりは数え年の四つの時のことである。

笑は量的に分てば微笑哄笑の二種あり。

日本のやうに機械の利用出来ぬ処では十分な事は出来ないでせうが、兎に角もつと美しい装幀の本が出て好いと思ひます。

僕は鼠（ねずみ）になつて逃げるらあ。

わが裏庭の垣のほとりに一株の臘梅あり。

わたくしはけふの講演会に出るつもりでゐましたが、腹を壊してゐる為に出られません。

僕の胃袋は鯨です。

天草の原の城の内曲輪。

「支那游記」一巻は畢竟（ひっきょう）天の僕に恵んだ（或は僕に災いした）Journalist 的才能の産物である。

一、佐藤春夫は詩人なり、何よりも先に詩人なり。

ヴオルテエルが子供の時は神童だつた。

佐佐木君は剛才人、小島君は柔才人、兎に角どちらも才人です。

大衆文芸は小説と変りはない。

桜さつぱりした雨上りです。

室生犀星はちゃんと出来上った人である。

僕が講演旅行へ出かけたのは今度里見※（さとみとん）君と北海道へ行つたのが始めてだ。

カフエ僕は或カフエの隅に半熟の卵を食べてゐた。

一、語学の英露独など出来る事。

私の家は代々お奥坊主だったのですが、父も母もはなはだ特徴のない平凡な人間です。

或春の午後であつた。

宇野浩二は聡明の人である。

伊香保の事を書けと云ふ命令である。

霜夜の記憶の一つ。

七八年前のことです。

夢の中に色彩を見るのは神経の疲れてゐる証拠であると云ふ。

×僕等の性格は不思議にも大抵頸（くび）すぢの線に現はれてゐる。

近藤君は漫画家として有名であった。

僕の経験するところによれば、今の小説の読者といふものは、大抵はその小説の筋を読んでゐる。

或冬曇りの午後、わたしは中央線の汽車の窓に一列の山脈を眺めてゐた。

彼の詩集の本屋に出たのは三年ばかり前のことだつた。

一昨年の冬、香取秀真氏が手賀沼の鴨を御馳走した時、其処に居合せた天岡均一氏が、初対面の小杉未醒氏に、「小杉君、君の画は君に比べると、如何にも優しすぎるじゃないか」と、いきなり一拶を与えた事がある。

春の日のさした往来をぶらぶら一人歩いてゐる。

元来僕は何ごとにも執着の乏しい性質である。

燕雀生といふ人、「文芸春秋」三月号に泥古残念帖と言ふものを寄せたり。

小学校時代。

僕が大学を卒業した年の夏、久米正雄と一緒に上総の一ノ宮の海岸に遊びに行つた。

わたしの作品がロシア語に飜譯されると云ふことは勿論甚だ愉快です。

中央美術社の展覧会へ行つた。

◇滝田君に初めて会ったのは夏目先生のお宅だったであろう。

俳画展覧会へ行つて見たら、先づ下村為山さんの半折が、皆うまいので驚いた。

改造社の古木鉄太郎君の言ふには、「短歌は将来の文芸からとり残されるかどうか？」に就き、僕にも何か言へとのことである。

今の世の中は、男の作つた制度や習慣が支配してゐるから、男女に依つては非常に不公平な点がある。

この夏僕のところへ、山形県から手紙が来た。

僕は一高へはひつた時、福間先生に独逸語を学んだ。

蓬平作墨蘭図一幀、司馬江漢作秋果図一幀、仙厓作鐘鬼図一幀、愛石の柳陰呼渡図一幀、巣兆、樗良、蜀山、素檗、乙二等の自詠を書せるもの各一幀、高泉、慧林、天祐等の書各一幀、――わが家の蔵幅はこの数幀のみなり。