芥川竜之介の全作品（6ページ目）

島木さんに最後に会ったのは確か今年（大正十五年）の正月である。

中村さん。

豊島は僕より一年前に仏文を出た先輩だから、親しく話しをするようになったのは、寧ろ最近の事である。

風に靡（なび）いたマツチの炎ほど無気味にも美しい青いろはない。

一、病中閑なるを幸ひ、諸雑誌の小説を十五篇ばかり読む。

「貴君の作品の中で、愛着を持つてゐらつしやるものか、好きなものはありませんか」と云はれると、一寸困る。

二三年前の夏である。

滝田君はいつも肥っていた。

アダムとイヴと小さい男の子と小さい女の子とが、アダムとイヴとの画を眺めてゐた。

三円で果亭の山水を買つて来て、書斎の床に掛けて置いたら、遊びに来た男が皆その前へ立つて見ちや「贋物ぢやないか」と軽蔑した。

こんな夢を見た。

僕はコンクリイトの建物の並んだ丸の内の裏通りを歩いてゐた。

僕の二十六歳の時なりしと覚ゆ。

僕の知れる江戸っ児中、文壇に縁あるものを尋ぬれば第一に後藤末雄君、第二に辻潤君、第三に久保田万太郎君なり。

現代はせち辛い世の中である。

江口は決して所謂快男児ではない。

予は過去二年間、海軍機関学校で英語を教へた。

おれは沼のほとりを歩いてゐる。

国民文庫刊行会の「世界名作大観」の第一部の十六冊の――どうも少し長い。

机僕は学校を出た年の秋「芋粥」といふ短篇を新小説に発表した。

菊池は生き方が何時も徹底している。

上海の商務印書館から世界叢書と云ふものが出てゐる。

おれは日比谷公園を歩いてゐた。

――沢木梢氏に――おれの家の二階の窓は、丁度向うの家の二階の窓と向ひ合ふやうになつてゐる。

十七音発句は十七音を原則としてゐる。

問現代の作家に就いて、比較上の問題ですが、東洋種と西洋種とに区別したら如何なものでせうか。

師走の或夜、父は五歳になる男の子を抱き、一しよに炬燵（こたつ）へはひつてゐる。

夜寒の細い往来を爪先上りに上つて行くと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。

或る一つの作品を書かうと思つて、それが色々の径路を辿（たど）つてから出来上がる場合と、直ぐ初めの計画通りに書き上がる場合とがある。

始皇帝がどう思つたか、本を皆焼いてしまつたので、神田の古本屋が職を失つたと新聞に出てゐるから、ひどい事をしたもんだと思つて、その本の焼けあとを見に丸ノ内へ行かうとすると、銀座尾張町の四つ角で、交番の前に人が山のやうにたかつてゐる。

○僕はこれからも今月のと同じような材料を使って創作するつもりである。

編輯者わたしの方の雑誌の来月号に何か書いて貰へないでせうか？作家駄目です。

恒藤恭は一高時代の親友なり。

この度は田端の人々を書かん。

序文人及び詩人としての薄田泣菫氏を論じたものは予の著述を以て嚆矢とするであらう。

僕は膝を抱へながら、洋画家のＯ君と話してゐた。

予等は芸術の士なるが故に、如実に万象を観ざる可らず。

十月のある午後、僕等三人は話し合いながら、松の中の小みちを歩いていた。

名士と家夏目先生の家が売られると云ふ。

夏目先生の書僕にも時々夏目先生の書を鑑定してくれろと言ふ人がある。

人僕は芭蕉の漢語にも新しい命を吹き込んだと書いてゐる。

欧羅巴的漢口この水たまりに映っている英吉利の国旗の鮮さ、――おっと、車子にぶつかるところだった。

毎年一二月の間になれば、胃を損じ、腸を害し、更に神経性狭心症に罹（かか）り、鬱々として日を暮らすこと多し。

じゅりあの・吉助は、肥前国彼杵郡浦上村の産であった。

I do not expect a friend a hundred years later.Public taste often fails in all fairness, let alone in today's aesthetic. History has told us that even the Athenian in the Periclean Age or the Florentine in Renaissance were quite far from bei...

売文に関する法律は不備を極めてゐるやうである。

舎衛城は人口の多い都である。

天王寺の別当、道命阿闍梨は、ひとりそっと床をぬけ出すと、経机の前へにじりよって、その上に乗っている法華経八の巻を灯の下に繰りひろげた。

こゝではプロレタリア文学の悪口をいふのではない。

◇ポーとは、ヱドガー、アラン、ポーのことです。