書き出し
そこにてわれを待たれよ!われ必ずその低き渓谷に御身と逢わむ(チチェスターの僧正ヘンリー・キング1のその妻の死せしおりの葬歌)御身自らの想像の光輝の中に惑乱し、御身自らの青春の焔の中に倒れし、薄命にして神秘なる人よ!再び幻想の中に予は御身を見る!いま一たび御身の姿は予の前に浮び上ってきた!――御身が今あるように――すなわち、ひややかなる影の谷の中にあるようにしてではなく――おお、そうではなく、――御身があるべきようにして――す...
底本
「アッシャア家の崩壊」角川文庫、角川書店, 1951(昭和26)年10月15日