書き出し
第一曲かのごとく酷き海をあとにし、優れる水をはせわたらんとて、今わが才の小舟帆を揚ぐ一―三かくてわれ第二の王國をうたはむ、こは人の靈淨(きよ)められて天に登るをうるところなり四―六あゝ聖なるムーゼよ、我は汝等のものなれば死せる詩をまた起きいでしめよ、願はくはこゝにカルリオペ七―少しく昇りてわが歌に伴ひ、かつて幸なきピーケを撃ちて赦をうるの望みを絶つにいたらしめたる調をこれに傳へんことを―一二東の碧玉の妙なる色は、第一の圓にいたるまで...
底本
「神曲(中)」岩波書店, 1953(昭和28)年3月5日