5分以内で読める青空文庫の短編作品（91ページ目）

義務の遂行とは、並たいていの事では無い。

腸を拂ふと欝血散じ、手足も暖まり頭輕く、肩張りなんぞ飛んでゆくと、三上の友人が漢方醫を同道されて、藥効神のごとしといふ煎藥をすすめてゆかれたので、わたしはそれを一服、ちよつと失禮して見た。

去年の暮から春へかけて、欠食児童のための女学生募金や、メガフォン入りの男学生の出征兵士や軍馬のための募金が流行したが、これらはいつの間にか下火になった。

古ぼけた美東京と違って、京都は展覧会を観る機会も数も少のうございますが、私は書画や骨董の売立のようなものでも、出来るだけ見逃さないようにして、そうした不足を満たすように心掛けて居ます。

あるところに、ものぐさじいさんが住んでいました。

今年はどんな一年として私たちに経験されてゆくだろう。

文章というものも生きているものだから、時代の空気といつも微妙なつながりをもって動いていると思う。

戯曲界不振の声を聞くことすでに久しい。

○信州に発甫という珍らしい地名の温泉地があります。

○高橋五郎氏に聴いた話である。

私は動物が好きだ。

古代芸術の香高い所、そして美しい山水にかこまれた「奈良」という土地に対して、私はまあ、どれ位い憧憬の心を持っていた事でしょう。

私小説というものがあって、その評判は好悪相半ばしているようだが、それは私という自分であるものにしか判らない小説、自分だけが面白がるための小説、を意味する心算ではないらしい。

（溶明）晴れたる空。

現在の、特に日本の、不調和な社会状態のうちに生活しているわれわれ、殊に、外部的交渉をおおく持つ男性が、心的、物質的に疲労しているということは、否めない一つの事実でしょう。

演劇に関する評論、感想、ノオトの類を集めてみたが、それらを系統的に配列する困難は、私が甚だ「学問的に」ものを言つてゐないといふこと、殊に、筆を執つた動機が殆ど常に外部からの註文に依つたといふことに原因がある。

芥川さんに始めておめにかかったのは、大正六年の多分三月頃のことだったと思います。

世の中の、どこに立つて居るのか、どこに腰掛けて居るのか、甚だ曖昧なので、學生たちは困つて居る。

古典劇の伝統と、新派浪漫劇の様式は、それ自身、ある「せりふ」廻しなるものを形づくつたが、それらの俳優は、また、それぞれ、修業の過程と工夫の範囲に於いて、各自独特の「声色」を生むに至つた。

年末から旅行をしてゐたので、今日（十四日）見ました。

○昔から名高い恋はいくらもあるがわれは就中八百屋お七の恋に同情を表するのだ。

最近 L'Assommoir といふ仏蘭西の発声映画を見る機会を得た。

わたしは在所から都の中に飛込んで来て、ちょっとまばたきしたばかりでもう六年経ってしまった。

江戸川乱歩氏が盛んに売り出そうとしている頃、それは確か関東大震災の翌年あたりであったと思う。

私が弘前の高等學校にはひつてその入學式のとき、訓辭した校長は、たしか黒金といふ名前であつたと記憶してゐる。

科学への関心が、いくらか流行の風潮ともなって、昨今たかめられて来ている。

恒藤恭は一高時代の親友なり。

ここに、四人の婦人の物語がある。

早く雪が消えて、かわいた土の上で遊びたくなりました。

義弟が、生れたばかりの赤坊と若い妻と母とをおいて再び出征するので、二十日ばかり瀬戸内海に沿った村へかえっていた。

年郎くんと、吉雄くんは、ある日、学校の帰りにお友だちのところへ遊びにゆきました。

某氏ある時、年賀状の返信を書いていた。

この前の事変に、父親は戦死して、後は、母と子の二人で暮らしていました。

伴団六は、青木と同じく、大して才能のなさそうな貧乏画かきで、地続きの古ぼけたアトリエに、年増くさい女と二人で住んでいた。

ユーゴーは『哀史』の一節にウォータールーの戦いを叙してこう云っている。

この度は田端の人々を書かん。

月の名所は桂浜といへる郷里のうた、たゞ記憶に存するのみにて、幼少の時より他郷に流寓して、未だ郷にかへりたることなければ、まことはその桂浜の月見しことなけれど、名たゝる海南絶勝の地の、危礁乱立する浜辺に、よりては砕くる浪の花しろく、九十九湾縹渺として烟にくるゝ夕雲をはらひはてし秋風を浜松の梢にのこして、長鯨潮を吹く浪路の末に、一輪の名月あらひ出されたらむは、如何に心ゆくべきかぎりぞや。

毎月いくつかのプロレタリア小説、ブルジョア小説が、いろいろな雑誌に発表される。

わたしたちが、ほんとに人間らしく生活したい、という希望を語るとき、誰がそんなことは生意気な望みだというだろう。

往来で放歌をすることは、近頃大分厳ましくなったが、或（ある）意味からいうと許してもよさそうなものだ、というのは、淋しい所などを夜遅く一人などで通る時には、黙って行くと、自然下らぬ考事などが起って、遂には何かに襲われるといったような事がある、もしこの場合に、謡曲の好きな人なら、それを唸（うな）るとか、詩吟を口吟むとか、清元をやるとか、何か気を紛らして、そんな満らぬ考を打消すと、結局夢中にそんな所も過ぎるので、これ等は誠によいことだと自分は思う。

良吉は、重い荷物を自転車のうしろにつけて走ってきました。

雪とうとう二十年来の肩の重荷をおろしましてほっといたしました。

むかし私はたいそう暇の多い人間だつた。

種族が異つても、国が異つても、文化が異つても、矢張人間だから、考へることが似たり寄つたりである。

ナポレオン三世の宮中では、皇后ウージェニイを中心に、当時の錚々たる文学者を交へた特色のある集会が行はれたが、その席で、何時からともなく、「秘書役ごつこ」といふ遊戯がはじまつた。

私は玩具が好です、幾歳になっても稚気を脱しない故かも知れませんが、今でも玩具屋の前を真直には通り切れません、ともかくも立停って一目ずらりと見渡さなければ気が済まない位です。

『獅子、子を生めば、必ず之を深谷に墜す。

神保町から小川町の方へ行く途中で荷馬車のまわりに人だかりがしていた。

昨年の夏は油汗を流しながら、改造社から頼まれたフローベールの短篇『エロディヤス』を訳して暮した。

これは現代の若き女性気質の描写であり、諷刺であり、概観であり、逆説である。