書き出し
小泉八雲といへば、日本人の名であるし、日本人として東京の宅で死んでその全集は日本語で出版されてゐるが、父は英國のアイルランドの軍醫、母はギリシャのリウカヂアの娘、子供の時はフランスの叔母の手で育てられ、青年時代にアメリカへ渡つて文學者となり、日本へ來て出雲松江の中學教師となり、小泉といふ士族の家へ婿入りして、日本人になり、熊本の高校、東京帝大に轉任して英文學の講義をし、おしまひは早稻田へ來て亡くなつた。
初出
1948年
(「夕刊ニイガタ」1948(昭和23)年5月25日)
底本
「會津八一全集 第七卷」中央公論社, 1982(昭和57)年4月25日