書き出し
(見えない一人の指揮者が彼等の上を飛び越え、狂奔し、埃と騒擾と錯乱の上を飛躍する、一物も纏わない裸身、その肩をかざる鮮かな二つの翼、剣の鞘は開かれ彼は先頭に立って走る……)叫喚と怒号、暗黒の大津波があらゆる細微物から、広汎な大運動を通じていま、一切の群集を煽り、先立たせ、狂奔せしめる、肩から肩、手から手、心魂から心魂へ、見えざる旋風が一切の熱狂を高く捲き上げる……。
初出
1921年
(「表現」1921(大正10)年10月号)
底本
「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社, 1987(昭和62)年5月25日