書き出し
はしがき我国の一大峡流である黒部川の全貌が完全に世に紹介されるに至ったのは、誰が何と言っても、これは立山後立山両山脈の山々と其(その)抱擁する谷々とに限りなき興味を有し、就中立山連峰と黒部峡谷とを礼讃して措かざる冠君の数年に亘(わた)りて惓むことを知らない努力の結果であることは、動かす可からざる事実であり、又よく人の知っている通りである。
初出
1935年
(「登山とはいきんぐ」1935(昭和10)年9月)
底本
「山の憶い出 上」平凡社ライブラリー、平凡社, 1999(平成11)年6月15日