ブンゴウサーチ
児童書版

花に送られる

今野大力
『花に送られる』は青空文庫で公開されている今野大力の短編作品。499文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   499 文字
人気
  -- PV
書き出し
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづくもうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりはきれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は花見客を待ちこがれているよう私の寝台自動車はその堤に添うて走る春めく四月、花の四月私は生死をかけて、むしろ死を覚悟して療養所へゆくすでに重症の患者となった私はこれから先の判断を持たない恐らく絶望であろうとは医師数人の言ったところ農民の家がつづく古い建物が多く...
初出
1935年   (「詩精神」1935(昭和10)年6月号)
底本
「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社, 1987(昭和62)年6月30日
表記
新字新仮名
※「人気」は青空文庫の過去10年分のアクセスランキングを集計した累計アクセス数から算出しています。

今野大力 の人気作品

少女受胎
今野大力
少女子を孕(はら)めるという太りたる腹はみにくくかわいらし少女子を孕めるという十月なる日を算えては頬笑める孕めるは何の摂理ぞ夜深く何を悩める人の世に明日あり今日ありさて遠く夢想の国に青き花咲くとも聞けり孕めるは何の摂理ぞ少女子を孕めるという。
5分以内
写真(北満の土産)その一
今野大力
どれもこれも貧しくけだもののように虐げられふけた表情をもった北満の農民のズラリと並んだ十人の子供達五つ位の女の子はハデなよごれた花模様のズボンと上衣をきて支那曲芸に出てくるような格巧八つ位の女の子は労働者のオーバオールのようなやつを着て両口尻にカサを出しキリッと睨み、七つばかりの男の子は困惑したオジサンのようにふけてズボンの紐をダラリと下げまゆをひそめて立っている六つ位の男の子は一寸快活そうで安物の腕輪をはめ前髪で額...
5分以内
ねむの花咲く家
今野大力
俺は病室にいる暗室のような部屋だ。
5分以内
組織された力
今野大力
どこからか捲き起された風渦になり、平になり、縦になり吹きまくってゆく、突風!疾風!屋根柾が矢のように走ってゆく塗炭板がぐうおうと引ぺがされて空をうなりながら飛んでゆくぐう、おう、ひゅうひゅう、おう、ぐう物凄い力となって粉々と雪を掻(か)っ飛ばして平原を十数丈の高さでぐんぐんと押よせる風陣!街の中も、原っぱも、村の街道も猛火のような怒りと憎しみに燃え立って前面に押し出し流され...
5分以内