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本土の港を指して

今野大力
『本土の港を指して』は青空文庫で公開されている今野大力の短編作品。311文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内   311 文字
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書き出し
津軽の海風は暮れ行く夕日の彼方へと連絡船を冷たく吹き送る桟橋に立ち去り兼ねて見送る人々とも別れて身をマントに包み頬をうずめて物蔭甲板に佇めば防波堤に点る明滅の灯火も見えずなり巍然たる函館山の容姿も次第に海をへだてて水夫の投げこんだ速度計の速めらるるままに闇の中に失われゆくかくて海峡の海は次第に荒く空よりは白き贈り物音もなく真闇の中に降り来り、海に消えマストに積る船は船底にひびくエンジ...
初出
1928年   (「旭川新聞」1928(昭和3)年5月31日)
底本
「今野大力作品集」新日本出版社, 1995(平成7)年6月30日
表記
新字新仮名
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少女受胎
今野大力
少女子を孕(はら)めるという太りたる腹はみにくくかわいらし少女子を孕めるという十月なる日を算えては頬笑める孕めるは何の摂理ぞ夜深く何を悩める人の世に明日あり今日ありさて遠く夢想の国に青き花咲くとも聞けり孕めるは何の摂理ぞ少女子を孕めるという。
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写真(北満の土産)その一
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5分以内