書き出し
〔一〕単の着物を羽織りたいま夏の時季が訪れたけれども私の白い単は恰(あたか)も乞食の着物の様によごれている*やるせない心は、私の生立ちの大切な、又、辛い負いめである私は荷われた運命の様に灯の下へも、川へも、丘へもともなわねばならないこれこそ私の友であるのだ*私はこれまで、商人達、友達、ああ私よりはたしかに裕福な人達にどんなにかいやな思いをさせたろう...
初出
1924年
(「旭川新聞」1924(大正13)年8月14~15日)
底本
「今野大力作品集」新日本出版社, 1995(平成7)年6月30日