書き出し
あの山を越えるときおれたちは機関車のように蒸気ばんでおっただまりこんでがつんがつんとあるいておった急に風がきて白い雪のかたまりをなげてよこした水筒の水は口の中をガラスのように刺したあの山を越えるときおれたちは焼ける樟樹であったいまあの山はまっ黒でその上にぎりぎりとオリオン星がかがやいているじっとこうして背嚢にもたれて地べたの上でいきづいていたものだまたもや風がきて雨をおれたちの顔にか...
底本
「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店, 2001(平成13)年11月30日