書き出し
聞く所によれば野蛮人は赤色を愛すると云うが、我輩文明人にしても尚野蛮の域に居る所の子供は赤色を好み、段々と大きくなるに従って、色の浅いものを好むようになる、而して純白色のものを以て最も高尚なものとするのは、我輩文明人の常である、左れば染色上の嗜好より人の文野を別てば、白色若しくは水色等を愛する者は最も文化したるもので、青色だの紅色だの又は紫抔(など)を愛するものは之に中し、緋(ひ)や赤を好む者は子供か又は劣等なる地位に居るものと言うて良い、扨(さ)て是から猫は如何なる染色を好むかに就て述...
底本
「日本の名随筆3 猫」作品社, 1982(昭和57)年12月25日