小川未明の全作品（11ページ目）

ある町の呉服屋の店頭に立って一人の少女が、じっとそこに飾られた人形に見いっていました。

天職を自覚せず、また、それにたいする責任を感ぜず、上のものは、下のものに好悪の感情を露骨にあらわして平気だった、いまよりは、もっと暗かった時代の話であります。

あるところに、踊ることの好きな娘がありました。

雪の降らない、暖かな南の方の港町でありました。

ある青年は、毎日のように、空を高く、金色の鳥が飛んでゆくのをながめました。

町はずれの、ある橋のそばで、一人のおじいさんが、こいを売っていました。

よっちゃんは、四つになったばかりですが、りこうな、かわいらしい男の子でした。

都会のあるくつ店へ、奉公にきている信吉は、まだ半年とたたないので、なにかにつけて田舎のことが思い出されるのです。

鈍い砂漠のあちらに、深林がありましたが、しめっぽい風の吹く五月ごろのこと、その中から、おびただしい白い蛾（が）が発生しました。

冬のさむい間は、霜よけをしてやったり、また、日のよくあたるところへ、鉢を出してやったりして、早く芽が頭をだすのを、まちどおしく思ったのであります。

雪が降りそうな寒い空合いでした。

学校から帰ると正雄は、ボンと楽しく遊びました。

あるところに、子供をかわいがっている夫婦がありました。

町の運輸会社には、たくさんの人たちが働いていました。

泉は、自分のかいこが、ぐんぐん大きくなるのを自慢していました。

昔、北の寒い国に、珍しい宝石が、海からも、また山からもいろいろたくさんに取れました。

あめ売りの吹く、チャルメラの声を聞くと、子供の時分のことを思い、按摩の笛の音を聞くと、その人は涙ぐみました。

旅から旅へ渡って歩く、父と子の乞食がありました。

空高く羽虫を追いかけていたやんまが、すういと降りたとたんに、大きなくもの巣にかかってしまいました。

私が六ツか七ツの頃であった。

「孝二、おまえでないか。

鉛色をした、冬の朝でした。

北の海の方にすんでいたかもめは、ふとして思いたって南の方へと飛んできました。

北の国の王さまは、なにか目をたのしませ、心を喜ばせるような、おもしろいことはないものかと思っていられました。

老婆は眠っているようだ。

Ｓ少年は、町へ出ると、時計屋の前に立つのが好きでした。

夜おそくまで、おじいさんは仕事をしていました。

太陽ばかりは、人類のはじめから、いや、それどころか、地球のできたはじめから、光のとどくかぎり、あらゆるものを見てきました。

自転車屋の店に、古自転車が、幾台も並べられてありました。

南洋のあまり世界の人たちには知られていない島に住んでいる二人の土人が、難船から救われて、ある港に着いたときでありました。

この港は山の陰になっていましたから、穏やかな、まことにいい港でありました。

さびしい、暗い、谷を前にひかえて、こんもりとした森がありました。

ある田舎の街道へ、どこからか毎日のように一人のおじいさんがやってきて、屋台をおろして、チャルメラを吹きならして田舎の子供たちを呼び集め、あめを売っていました。

ある田舎に光治という十二歳になる男の子がありました。

後になってから、烏帽子岳という名がついたけれど、むかしは、ただ三角形の山としか、知られていませんでした。

赤ん坊をおぶった、男の乞食が町へはいってきました。

それは、春の遅い、雪の深い北国の話であります。

とうげの、中ほどに、一けんの茶屋がありました。

夏の日のことでありました。

あるところに、だれといって頼るところのない、一人の少年がありました。

人間が、天国のようすを知りたいと思うように、天使の子供らはどうかして、下界の人間は、どんなような生活をしているか知りたいと思うのであります。

不思議なランプがありました。

垣根の楓（かえで）が芽を萌（ふ）く頃だ。

赤い牛乳屋の車が、ガラ、ガラと家の前を走っていきました。

道であった、顔見知りの人は、みすぼらしい正吉の母にむかって、「よく、女手ひとつで、むすこさんを、これまでになさった。

いま日本は、一面に戦い、一面に東亜建設の大業に着手しつつある。

〔人物〕第一の見慣れぬ旅人第二の見慣れぬ旅人第三の見慣れぬ旅人第四の見慣れぬ旅人第五の見慣れぬ旅人第六の見慣れぬ旅人第七の見慣れぬ旅人白い衣物を着た女〔時〕現代遥かに地平線が見える。

ある村に、人のよいおじいさんがありました。

こい紫の、ちょうどなす色をした海の上を、赤い帯をたらし、髪の毛をふりみだしながら、気のくるった女が駈（か）けていくような、夏の雲を、こちらへきてからは、見られなくなったけれど、そのかわり、もっとやさしい女神が、もも色の長いたもとをうちふり、うちふり、子どもたちといっしょに鬼ごっこをしているような、なごやかな夕雲の姿を、このごろ毎日のごとく、街の上の空に、ながめるのであります。

ある日のことであります。