書き出し
いく年かものにまぎれて筐底にひそみゐし舊詩二章、その心あわただしくその詞もとより拙きのみか、遠き日の情懷ははた囘顧するにものうけれども、この集の著者がなほけふの日の境涯をいささかまた歌ひえたるに肖たるを覺ゆ、すてがたければとどめて序にかへんとす――一點鐘二點鐘靜かだつた靜かな夜だつた時折りにはかに風が吹いたその風はそのまま遠くへ吹きすぎた一二瞬の後いつそう靜かになつたさうして夜が更けたそん...
初出
1941年
(ある橋上にて「四季 五七號」1941(昭和16)年5月<br>波「婦人公論」1941(昭和16)年6月<br>貝殼「婦人公論」1941(昭和16)年6月<br>既に鴎は「婦人公論」1941(昭和...)
底本
「三好達治全集第一卷」筑摩書房, 1964(昭和39)年10月15日