書き出し
鴉靜かな村の街道を筧が横に越えてゐるそれに一羽の鴉がとまつて木洩れ陽の中に空を仰ぎ地を眺め私がその下を通るときある微妙な均衡の上に翼を※(をさ)めて秤(はかり)のやうに搖れてゐた湯沸したぎり初めた湯沸し……それはお晝休みの小學校の校庭だ藤棚がある池がある僕らはそこでじやんけんする僕は走る僕は走る……かうして肱をついたまま夜の中にたぎり初めた湯沸し……靜夜柱時...
初出
1932年
(友を喪ふ 四章「文藝春秋」1932(昭和7)年5月<br>土「作品 三卷七號」1932(昭和7)年7月<br>路傍「作品 三卷七號」1932(昭和7)年7月<br>霽れ「作品 三卷七號」1932...)
底本
「三好達治全集第一卷」筑摩書房, 1964(昭和39)年10月15日