書き出し
かつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへりかつてわが悲しみはかの丘のほとりにいこへり五月またみどりはふかく見よかなたに白き鳥のとぶありおのが身ははやく老いしかこの日また何にいそぐやあてどなき旅のひと日の夕ぐれの汽車のまどべにかの丘はしづかに來りかの丘は來りぬかづく見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐりたり見よかしこになつかしきかの細路は木の間をいゆきめぐり...
初出
1940年
(「朝日新聞」1940(昭和15)年5月6日)
底本
「三好達治全集第一卷」筑摩書房, 1964(昭和39)年10月15日