5分以内で読める青空文庫の短編作品（93ページ目）

戦争中、私の家の両隣はそれ／″＼軍需会社の寄宿舎となり、一方は田舎の十八九歳の連中五十名ぐらゐ、一方は普通のしもた家を軍需会社が買つて七八名の少年工を合宿させておく。

時は午後八時頃、体温は卅八度五分位、腹も背も臀（しり）も皆痛む、アッ苦しいナ、痛いナ、アーアー人を馬鹿にして居るじゃないか、馬鹿、畜生、アッ痛、アッ痛、痛イ痛イ、寝返りしても痛いどころか、じっとして居ても痛いや。

戸田は、お父さんがなくて、母親と妹と三人で、さびしく暮らしているときいていたので、賢吉は、つねに同情していました。

光を含んだ綿雲が、軒端に見える空いつぱいに輝いて、庭木といふ庭木は葉先ひとつ動かさず、それぞれに雲の光を宿して濡れた樣に靜まつてゐる。

綜合大學を作るのに、まづもつて、何よりも大切なのは、よき總長を得ることだといふやうな意見を、最近何處かで見たが、これはとんでもない大まちがひの意見で、私は、びつくりしてしまつた。

洋次郎は、銀座の裏通りにある“ツリカゴ”という、小さい喫茶店が気に入って、何時からとはなく、そこの常連みたいになっていた。