小川未明の全作品（4ページ目）

野原の中に、大きなかしの木がありました。

さまざまの草が、いろいろな運命をもってこの世に生まれてきました。

時間的に人事の変遷とか、或（あるい）は事件の推移を書かないで、自分の官能を刺戟したものを気持で取扱って、色彩的に描写すると云うことは新らしき文芸の試みである。

町はずれに、大きなえのきの木がありました。

吉坊は、父親に、自転車を買ってくれるようにと頼みました。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、たいへん。

幸ちゃんと、清ちゃんは、二つちがいでしたが、毎日仲よく学校へゆきました。

ある、小学校の運動場に、一本の大きな桜の木がありました。

バーンズの詩の中に、野鼠について、うたったのがある。

もうじきに春がくるので、日がだんだんながくなりました。

毎朝きまって、二羽のうぐいすが庭へやってきました。

上夏の初めになると、南の方の国から、つばめが北の方の国に飛んできました。

年ちゃんの友だちの間で、ハーモニカを吹くことが、はやりました。

この夏のことでした。

どこから、追われてきたのか、あまり大きくない雌犬がありました。

平和を目的にして、武器が製造せられ、軍備がなされるならば、其の事が既に、目的に対する矛盾であることは、華府会議の第一日にヒューズが言った通りであります。

清さんとたけ子さんの二人は、お母さんにつれられて、海岸へまいりました。

正二は、夏のころ、兄さんと川へいっしょにいって、とってきた小さな魚を、すいれんの入っている、大きな鉢の中へ入れて、飼っていました。

私は、その青春時代を顧みると、ちょうど日本に、西欧のロマンチシズムの流れが、その頃、漸く入って来たのでないかと思われる。

たいそう外科的手術を怖ろしがっている、若い婦人がありました。

二時間の図画の時間に、先生が、「みなさんのお母さんを、描いてごらんなさい。

あるところに、ものぐさじいさんが住んでいました。

早く雪が消えて、かわいた土の上で遊びたくなりました。

年郎くんと、吉雄くんは、ある日、学校の帰りにお友だちのところへ遊びにゆきました。

この前の事変に、父親は戦死して、後は、母と子の二人で暮らしていました。

良吉は、重い荷物を自転車のうしろにつけて走ってきました。

舞子の停車場に下りた時は夕暮方で、松の木に薄寒い風があった。

正ちゃんは、やんまを捕りました。

李（り）さんが、この町にすんでから、もう七、八年になります。

夏の晩方のことでした。

川の辺に、一本の大きなくるみの木が立っていました。

いまごろ、みんなは、たのしく話をしながら、先生につれられて、知らない道を歩いているだろうと思うと、勇吉は自分から進んで、いきたくないと、こんどの遠足にくわわらなかったことが、なんとなく残念なような気がしました。

戸田は、お父さんがなくて、母親と妹と三人で、さびしく暮らしているときいていたので、賢吉は、つねに同情していました。

町からはなれて、静かな村に、仲のいい兄妹が住んでいました。

太郎は、お父さんや、お母さんのいうことを聞きませんでした。

それは、独り、男の子と限った訳ではないが、子供を一人前に養育するということは決して容易なことでないのは、恐らく、すべての子供を持った程の人々なら、想像されることだと思います。

今度の震災の災禍が、経済上にまた政治上に、影響し、従って複雑な関係を個人生活の上にも生じた点が少くない。

天心に湧く雲程、不思議なものはない。

田園の破産学生の時分、暑中休暇に田舎へ帰って、百姓に接したときは、全くそこに都会から独立した生活があったように感じられたものです。

書かれている事件が人を驚かすのでない。

私は、机の前に坐っているうちに、いつしか年をとってしまいました。

光線の明るく射す室と、木影などが障子窓に落ちて暗い日蔭の室とがある。

白と黒の、ぶちのかわいらしい子ねこが、洋服屋の飾り窓のうちに、いつもひなたぼっこをしていました。

お母さんたちが、何か心配なことでもあって、じっと考えていられるとします。

昔、あるところに、さびしいところの大好きなお姫さまがありました。

物が新しくそこに生れるという事は、古い形が破壊されたということを意味するに他ならない。

ブリキ屋根の上に、糠（ぬか）のような雨が降っている。

いろいろの店にまじって、一けんの筆屋がありました。

私にとっては文芸というものに二つの区別があると思う。

極めて単調子な、意味のシンプルな子守唄が私の心を魅し去ってしまう。