青空文庫の全作品（315ページ目）

腰の物拝見「お武家お待ち」という声が聞こえたので、伊東頼母は足を止めた。

医者の友達１・５（夕）寺内内閣が壊れて、その跡へ政友会内閣が出来かゝるやうな運びになつて、総裁原敬氏の白髪頭のなかでは、内閣員の顔触が幾度か見え隠れしてゐた頃、今の文相中橋徳五郎氏の許へ、神戸にゐるお医者さんの桂田富士郎氏から一本の電報が飛込んで来た。

第２版へのこの本の第１版は1849年の８月に出版されたものであるが、薄いパンフレットに過ぎないものであった。

大雷雲ねずみ色の雲が、ついに動きだした。

［＃左右中央］母に捧ぐ［＃改ページ］ジャンナン家は、数世紀来田舎の一地方に定住して、少しも外来の混血を受けないでいる、フランスの古い家族の一つだった。

八幡村の小泉の家に隠れていた机竜之助は、ひとりで仰向けに寝ころんで雨の音を聞いていました。

二月二十二日［注・昭和十一年］家人への手紙今さき門司を出た。

この巻は安房の国から始めます。

みぞれの街道場からあがり、汗みずくの稽古着をぬいでいると、秋田平八が来て「おめでとう」と云った。

一家団欒お父さんが社から帰って来て、一同晩餐の食卓を囲む時、その日起った特別の事件が話題に上る。

占われたる運命は？「お侍様え、お買いなすって。

「仙臺の方言」と「土佐の方言」へはそれぞれ斯道の大家の序を頂戴したが、今度の隨筆集の序はどなたに御願ひしようかと出版者に相談した處、御良人がいゝでせうと曰はれました、どうかよろしくとの申出である。

夜が明けると共に靄（もや）も霽（は）れてしまいました。

お鳥は、兄のところを拔けて來る場合が見付かり難かつたとて、四日目にやつて來た。

怪しい空缶どういうものか、ちかごろしきりと太平洋上がさわがしい。

父の誕生日に瓦斯マスクの贈物「やあ、くたびれた、くたびれた」家中に響きわたるような大声をあげて、大旦那の長造が帰って来た。

第一篇赤おうむ銀杏の樹昔或る処に一人の乞食小僧が居りました。

その晩のこと、宇治山田の米友が夢を見ました。

［＃ページの左右中央］人生随想［＃改ページ］人生と出発人生は不断の出発人生は不断の出発であります。

前篇青みを帯びた皮の、まだ玉虫色に光っている、活きのいいみごとな秋鯵だった。

いずれの国の人たるを問わず、苦しみ、闘い、ついには勝つべき、あらゆる自由なる魂に、捧（ささ）ぐ。

呉葉は瓜の出來る川ぞひの狛の里から、十の時に出て來て、それからずつと長く兵衞佐の家に仕へた。

祖国近し房枝は、三等船室の丸窓に、顔をおしあてて、左へ左へと走りさる大波のうねりを、ぼんやりと、ながめていた。

秋風ぞ吹く白河の関の一夜、駒井甚三郎に宛てて手紙を書いた田山白雲は、その翌日、更に北へ向っての旅に出で立ちました。

一月一日（日曜）晴昨夜、二時頃吉田さんの処から帰って来ると、神保町で停電し、とうとう春日町まで歩いた。

後の業平文治三遊亭圓朝鈴木行三校訂編纂えゝ此の度（たび）は誉（ほま）れ高き時事新報社より、何か新作物を口演致すようとの御註文でございますから、嘗（かつ）て師匠の圓朝（えんちょう）が喝采（かっさい）を博しました業平文治（なりひらぶんじ）の後篇を申上げます。

八月――日駈けて来る足駄の音が庭石に躓（つまず）いて一度よろけた。

一九四五年八月十五日の日暮れ、妻の小枝が、古びた柱時計の懸っている茶の間の台の上に、大家内の夕飯の皿をならべながら、「父さん、どうしましょう」ときいた。

はじめに魚釣りと人生は実によく似かよったところがある。

「お侍様というものは……」女役者の阪東小篠は、微妙に笑って云ったものである。

めでたき風景奈良公園の一軒家で私が自炊生活していた時、初春の梅が咲くころなどは、静かな公園を新婚の夫婦が、しばしば散歩しているのを私の窓から十分眺めることが出来た。

女の構図キャバレエ十番館の裏は、西木屋町に面し、高瀬川が流れた。

第一回獣人「マドリッド日刊新聞」の記事……怪獣再び市中を騒がす。

桐畑の太夫今から二十年あまりの昔である。

怪事件の第一ページまさか、その日、この大事件の第一ページであるとは春木少年は知らなかった。

一月八日午後〔市ヶ谷刑務所の顕治宛駒込林町より（封書）〕一月八日第二十六信晴れ。

樺太で自分の力に餘る不慣れな事業をして、その着手前に友人どもから危ぶまれた通り、まんまと失敗し、殆ど文なしの身になつて、逃げるが如くこそ／＼と北海道まで歸つて來た田村義雄だ。

［＃ページの左右中央］彼女が謎だった夏［＃改ページ］教授の研究室のドアは開いていた。

臨時放送だ！「テレ・ラジオの臨時ニュース放送ですよ、おじさん」矢木三根夫は、伯父の書斎の扉をたたいて、伯父の注意をうながした。

暴風雨雲は海をあっし海は雲をける。

温かい酒、温かい飯、温かい女の情味も畢竟（ひっきょう）、夢でありました。

柚子柚の木の梢高く柚子の実のかかっているのを見るときほど、秋のわびしさをしみじみと身に感ずるものはない。

武州沢井の机竜之助の道場に、おばけが出るという噂（うわさ）は、かなり遠いところまで響いておりました。

転地療養寿商店の独息子新太郎君が三度目の診察を受けた時、丹波先生は漸く転地を勧めてくれた。

一月二日〔巣鴨拘置所の顕治宛駒込林町より（封書）〕一九四五年一月二日明けましておめでとう。

［＃ページの左右中央］バスを待つうしろ姿［＃改ページ］昼食には洋食の店でコロッケを食べた。

五六台の一輪車が追手に帆をあげた。

余をして人情の重んずべきを知らしめ、己れを愛し、人を愛し、国を愛することを知らしめ、真理の線路を走り、正を踏んでおそれざることを知らしめたるは、みななんじの教育にこれよるなり。

お庄（しょう）の一家が東京へ移住したとき、お庄はやっと十一か二であった。

一席申し上げます、是は寛政十一年に、深川元町猿子橋際で、巡礼が仇（あた）を討ちましたお話で、年十八になります繊弱い巡礼の娘が、立派な侍を打留めまする。