5分以内で読める青空文庫の短編作品（5ページ目）

美味談も考えてみるとなかなか容易ではない。

信じるより他は無いと思う。

「も」の字につきて質問に御答申候。

学校へいくとちゅうに、大きな池がありました。

自然主義といふ言葉とヒロイツクと云ふ文字は仙台平の袴と唐桟の前掛の様に懸け離れたものである。

私のつけ句連作とは連歌俳諧の如きものであろう。

學校の歸りに君子さんはお友達のノリ子さんにうちのチユーリツプの自慢をしました。

私はまたその妹とすごした海岸の夏をわすれたことはない。

四郎は南の島から復員した。

学生時代の僕は第三次並びに第四次「新思潮」の同人と最も親密に往来してゐた。

探偵小説が一時より衰えたことは争われない。

山の上には雲が流れてゐたあの山の上で、お弁当を食つたこともある……女の子なぞといふものは由来桜の花弁のやうに、欣（よろこ）んで散りゆくものだ近い過去も遠いい過去もおんなじこつた近い過去はあんまりまざまざ顕現するし遠いい過去はあんまりもう手が届かない山の上に寝て、空をみるのも此処にゐて、あの山をみるのも所詮は同じ、動くな動くなあゝ、枯草を背に敷いてやんわりぬ...

友よ友よ四年も君に會はずにゐる……さうしてやつと君がこの世を去つたのだとこの頃私は納得したもはや私は悲しみもなく愕きもなく（それが少しもの足りない）君の手紙を讀みかへす――昔のレコードをかけてみる。

競馬場がふえ、競馬ファンもふえてきた。

のりの茶漬けは至極簡単だが、やっている人は少ない。

雪はふる雪はふる聲もなくふる雪は私の窗の半ばを埋める私の胸を波だてたそれらの希望はどこへ行つたか――また今宵それらの思出もとび去りゆく夜空のかぎり雪はふる雪はふる雪は思出のやうにふる雪は思出のやうにふるまた忘却のやうにもふる。

コレガ人間ナノデス原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ肉体ガ恐ロシク膨脹シ男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘルオオソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ「助ケテ下サイ」トカ細イ静カナ言葉コレガコレガ人間ナノデス人間ノ顔ナノデス夕食が済んで病妻が床に横はると、雨戸をおろした四辺は急に静かになる。

――あの人があんなふうにして不意に死んだのでなかったら、仮にまあ長い患のあとででもなくなったのであったら、きっと、あなたと私とのことを、たとえばいいとか決していけないとか、何かしらともかくもはっきりと言い置いたろう……わたしはどうもそんな気がするのです。

岩魚――宋青磁浮紋双魚鉢――五月のあかるい昼さがりあまりに生の時間が重いので私はひとり青磁の鉢を見ている空いろの底に二匹の岩魚が見えたりかくれたりすぎる風に水がゆれると岩魚の背もかすかに紅いろに光るまた水底をよぎる遠い宋時代の雲ながい時間のかげりをひいて愁いの淵に岩魚はねむり時に目を醒ましてはねるといつのまにか蒼天をおよいでいる鮭白い皿の上の...

老境にはいると、若い時分のような楽みが、だんだんと無くなって来る。

どこにいたってプーもいるいつだってプーとぼくなにしたってまねしたがる「今日はどこ行く？」ってプー「へえおもしろいねきぐうだねいっしょに行こう」って言うんだよ「いっしょに行こう」ってプーのやつ「２×11は？」ってプーにきく（「２×なに？」ってかえすプー）「たぶん22になるはず」「そうじゃないかと思ったよ」ってプー「かけ算ってそうやさしくないけどさそうじゃ...

お※！ローザ、トリアニ。

表情がうまい、というだけでは、いけないと思うんだ。

幽霊の中で好いものは、牡丹燈籠のお米である。

清盛が、叡山の僧兵にかつがれた神輿に、矢を射込む場面を、撮影しているところだ。

空は晴れてても、建物には蔭があるよ、春、早春は心なびかせ、それがまるで薄絹ででもあるやうにハンケチででもあるやうに我等の心を引千切りきれぎれにして風に散らせる私はもう、まるで過去がなかつたかのやうに少くとも通つてゐる人達の手前さうであるかの如くに感じ、風の中を吹き過ぎる異国人のやうな眼眸をして、確固たるものの如く、また隙間風にも消え去るものの如くさうしてこの淋しい心を抱いて、今年...

序論Ｇ線の下でアリアをうたっていたてるてる坊主が雨にぬれていた本論交通が便利になって文化はランジュクした戦争に勝ってリキュウルをのんだはだかおどりの女のパンツは日章旗であったタケヒサ・ユメジがみみかくしの詩をかいた人は死ぬことを考えて女とあそんだ女とあそんで昇天した震災が起っていく人もやけ死んだやけ死ななかったものは...

……新しき時代の浪曼主義者は三汀久米正雄である。

ラムネラムネといふもの、不思議になつかしく愉快なものだ。

伯林カイザー街の古い大アパートに棲んで居た冬のことです。

世田谷へ移つてから、新宿へ出る機會が多くなつた。

現代と宗教現代は科学の時代であるという。

新日本建設の基礎となる新憲法は、國民の眞摯なる※［＃「執／れんが」、U+24360、1-2］意と自由なる意思により、第九十議會を通じて成立した。

うたちゃんは、三人兄弟の末で、来年からは幼稚園へ行こうというのですが、早くから、自分ではお姉ちゃん気どりで「えいちゃん」「えいちゃん」と、自分をよんでいます。

今日では温室栽培の向上によって、くだもの、野菜など季節がなくなってしまった。

諸君は井戸の中の蛙だと、癩者に向つて断定した男が近頃現れた。

こん畜生！おれはみぶるいしたおれは菊一文字の短刀を買ってふたたびその女のところへきたさァ死ねさァ死ねお前のような不実な奴を生かしておくことはおれの神経がゆるさん女は逃げようとしたまて死ねなけゃおれが殺して――ひとの真実をうらぎるやつはそれよりもおれに大恥をかかしたやつはココ殺してやるきったついた血が吹いたこん畜生！おれはふたたびみぶる...

沙羅木は植物園にもあるべし。

人間五十年以上も生きていると、誰でも私の経験したような、奇々怪不可思議な出来事に一度や二度はあうものであろうか。

北海道の花といえば、誰でもまず鈴蘭を思い出すだろう。

「黒死館殺人事件」の完成によって、それまで発表した幾つかの短篇は、いずれも、路傍の雑草のごとく、哀われ果敢ないものになってしまった。

猫が森のなかでお狐さまに行きあったことがありました。

熊本の徳富君猪一郎、さきに一書を著わし、題して『将来の日本』という。

どこの国、いずこの地方に行ってもお国自慢というものがある。

雪がふると巷の音がしずかになる。

○文開く衣の袖はぬれにけり海より深き君が美心世の人はわれをなにともゆはゞいへわがなすことはわれのみぞしる春くれて五月まつ間のほととぎす初音をしのべ深山べの里湊川にて月と日のむかしをしのぶみなと川流れて清き菊の下水明石にてうき事を独明しの旅磯うつ浪もあわれとぞ聞○人心けふやきのふとかわる世に独なげきのます鏡哉。

砲煙弾雨の中に常に描いて居た懐かしい故郷の停車場だった白布に包まれた木箱の中で無言の英雄は故郷に抱かれた喜こびに打ちふるえて居るだろう軽々とけれどつつましく木箱を捧げた戦友は微かな砲煙の臭を感じながら高まって来る感情をこらえて居た弔旗が...

近來科學知識が一般に歡迎せられつゝあるは喜ぶ可き現象である。

またひとり、作家が自殺した、といふ感じ方でこのニュウスを受けとつた人々がずいぶんたくさんあつたと思ふ。

以前田舎へ旅行すると、昔「出家とその弟子」を書いた倉田百三氏とよく間違へられたことがある。